
■東京・芝浦 20:00
集合場所に現れたアルファ・スパイダーは、シルバーボディに赤い内装のなんとも艶かしい佇まい。ドアを開けると赤く染まったダッシュボードやトリムやシートがルームライトにぼんやりと浮き上がり、いかにも妖しげなムード。
「看板も出していない秘密のバーに連れて来られた。そんな気分になりますね」と潮凪さんも思わず感嘆の声をもらす。アプローチの段階ですでに人の心を酔わせてしまうスパイダー、腕っこきの恋愛マイスターも一瞬で恋に落ちてしまったようです。
■東京・お台場 21:00
レインボーブリッジを渡りお台場へ向かう。景色も車内も真っ暗な中、インパネとセンターコンソールのアンバーレッドの文字だけがやけにぼうっと浮かんでみえる。
「止まっていても走っていても、気分を盛り上げずにはおかないクルマですね」。そんなスパイダーは、潮凪さん曰く「冷静になれないクルマ」。いいですねこのコピー。フィアットオートモビルズさん、カタログのコピーにいかがですか?
■東京・某工業地帯 22:00
クルマはショッピングモールが立ち並ぶ華やかな場所をやり過ごして、積み上げられたコンテナや大型トラックがうずくまるように並ぶ工業地区へ。しんと静まりかえった夜の工業地帯には一種独特の空気が漂っている。
東京湾越しにお台場の煌びやかなイルミネーションを見渡す道路の片隅に、スパイダーをそっと停める。屋根を開け放しにして一服していると、雨粒がぽつり。オープンカーに乗っているときの突然の雨。これってちょっと興ざめ? ところが潮凪さんにしてみると、これも恰好の演出になるという。
「クルマに乗っていながらのレインシャワー。これってオープンカーでなければ味わえない特異なシチュエーションでしょう。だから、突然雨が降ってきてもクルマを停めるまでの1〜2分はその状況をあえて愉しんでしまったほうがいい」
例えばデート中に道に迷ってしまっても、「ハッピーなドライブの時間がそれだけ増えたわけです。知らない道を冒険するつもりで頭を切り換えれば、迷子も逆に愉しめる」。突然のアクシデントをマイナスに考えるのではなく、逆に愉しんでしまう余裕。たしかにこういう遊び心というか器の大きさに、女心って弱いものなんです。
夜の闇が濃くなるほど、赤い内装が深みを帯びアンバーのレタリングが冴え冴えと映えて、車内にはどんどん濃密な空気が満ちていく。まったくスパイダーというクルマは、恰好の“口説き”空間である。男と女、この車内に身を寄せてさえいれば、酒の力など借りずとも十分いい雰囲気になってしまうことでしょう。