


クルマとバイクに対する情熱が伝わってくるガレージ。MVアグスタ350Sとディーノ308GT4が共存している
コンクリートの肌と大開口のガラス窓が目を引く。シンボルツリーの杏の木が周囲の空気をやわらげていた

イタリアを代表するスポーツカーメーカー、フェラーリ社が製造した2+2の希少なスーパーカー。3L・V型8気筒エンジンを後席の背後に搭載。1973年から80年まで生産された
現在、ランチア・デルタやポルシェ・カレラを収めるクルマ空間を設計中。最近は、ガレージと玄関を一体にした空間を望む声が増えているという。All Aboutのプロファイルに登録
「AllAbout ProFile 黒崎 敏」
施主のMさんは筆者と同じで小学生の頃にスーパーカーブームを経験した、いわゆるスーパーカー世代である。何でそのクルマが好きなんだと冷静に問いつめられると返答に窮するが、好きなものは好きなのだ。Mさんの場合は「短いノーズと後ろの長いクルマ」が好きで、ディーノ308GT4にご執心となった。このクルマは1970年代におけるフェラーリの大ヒット作となった308GTシリーズの1バリエーションで、エンジンを居住スペースの後ろに積むミッドシップ車にもかかわらず、後席を備えた4シーターであることが特徴だ。
極論すれば、そのディーノ308GT4を収めるための家が今回紹介するM邸だ。なにしろ、社会人になりたての24歳のとき、巨額のローンを組んで手に入れた憧れのスーパーカー。博物館の展示車両だったため塗装の状態は素晴らしく、オーナーでなくともきちんとした環境で保存したくなる気持ちになるほど美しい。「クルマと一緒にいられるスペースを作りたい、というのが、この家を造ったメインのコンセプトです」とMさんは語る。
クルマを入れるのが最大の目的なら、あとはどうでもいいかといえばそうではなくて、家全体、あるいはディテールに施主の多趣味ぶりやセンスの良さがちりばめられているが、それは次ページに譲るとして、ガレージを詳細に眺めていこう。
クルマが中心(普段の足に使うのはフィアット・パンダで、ガレージ前に横付けされている)の生活だけあって、土地はクルマのアクセスに便利な場所を選んだ。日当たりのいい南面にガレージが向いている。「やはりコンクリートと木のコントラストでしょう」と、オーバースライド式のシャッターは木製にこだわった。そのシャッターを開けるとコンクリートに囲まれた空間が現れる。向かって左側にはマン島TTレースが似合いそうなレトロかつレーシーなバイク。その隣りに工具箱。壁にはフェラーリを象徴する跳ね馬のフラッグが垂れ下がっていたりして、クルマを置くためのスペースというより、メンテナンスガレージの趣を伝えてくる。
それもそのはずで、Mさんはクルマを眺めたり乗ったりするだけでなく、いじるのも大好き。「本当は地下にピットを造ってクルマの下に潜り、自分で整備したかったんです。エンジンも降ろせますしね。でも、予算の関係で諦めました」とMさん。「この状態でも、自分でマフラーを交換したり、キャブを調整したりしています。このクルマは正規輸入品なのですが、ベースは北米仕様。だから、醜い5マイルバンパーが付いているので、これをオリジナルのヨーロッパ仕様に換えたい。そんなことを妄想しながら、毎日このクルマを眺めています」
ガレージの奥は、グラフィックデザイナーを職業とするMさんの仕事スペース。居住スペースから仕事スペースへ出入りする際は、必ずディーノ308GT4が目に入る仕組みだ。
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