


13台の自転車と2台のバイクを収納してもなお広々としたガレージ。3.2mの高い天井は、自転車を吊り下げるため
木製シャッターを開けると自転車とバイクのためのガレージが現れる。施主はバイクで通勤しているため、玄関ではなく、ガレージからの出入りがほとんど

「ビッグワン」の別名を持つ名機、1993年式のホンダCB1000。往復約100kmの高速通勤用には「ビッグバイクが最適」(今坂さん)と、引っ越しを機に上司から譲ってもらった
「個性あるライフスタイルをいかに具現化するか」に軸足を置きながらも、「住宅は社会のストックである」意識から離れることなく、周辺環境との調和にも気を配る、スーパーカー世代の建築家。
「中村高淑建築設計事務所」
オーバースライダー式の木製シャッターが作動音も滑らかに上昇すると、大空間が出現する。天井が高いため、ガレージ、というよりちょっとしたホールだ。開口部は北向きだが、東側に大きな明かり取りがあるおかげで、やわらかな光が差し込む。床には施主のこだわりで強度に優れた2液式のエポキシ塗料が塗ってある。実用性を考えての選択だが、独特のツヤと透明感が、インナースペースにふさわしい上質なムードを醸し出すという副次的な効果を発揮している。
ガレージの主役はクルマではなく、自転車とバイクである。マウンテンバイクを中心に13台が壁面と天井にストックされている。西側の壁に張り付く木製の棚は施主の自作。その足元にはチェーンソー。自転車の何台かは天井から吊り下がっているが、天井を高くしたのはそのため。3.2mの数値は、吊した自転車と施主の頭が干渉しないよう計測した末に導き出したという。
そしてバイクが2台。1台は排気量1リッター・直列4気筒エンジンを積んだホンダCB1000スーパーフォアで、施主が都内への通勤用に使っている。もう1台はオーストリアのKTM520EXC-R。本来はオフロード競技用のバイクだが、小径のオンロードタイヤに換装したモタード仕様だ。所有するバイクからも、施主の趣味性の高さと深さをうかがい知ることができる。
自転車が13台にバイクが2台。これらを整備するにしてもスペースはたっぷりだが、種明かしは後にするとして、「秦野の家」は、自転車とバイクの収納を第一に考えた家である。現在のところ、バイクは趣味と言っていいが、自転車は施主にとって趣味であると同時に仕事でもある。実は施主の今坂純也さん、自転車専門誌『バイシクルクラブ』(エイ出版社)の編集長であり、オールアバウトでも『スポーツ自転車』のガイドを務めているのだ。
以前住んでいたテラスハウスに泥棒が入ったり、虎の子のKTMレース仕様を盗まれたりという出来事も打撃ではあったが(それはそうである)、趣味と実益を兼ねる自転車の保管場所が自宅から3km離れたコンテナだったのは、いかにも効率が悪かった。「出し入れするのも面倒でしたし、整備途中で放り出しておけないのもやっかいでした」と、今坂さんはコンテナ時代を振り返る。近くのコンテナが放火されるという物騒な事件も、「家を建てる」決意を後押しした。土地の選択は、予算と環境のバランスを考慮してのこと。環境とはもちろん、「周囲にマウンテンバイクで走り回れる山がある」ことを意味する。
念願のガレージを手に入れた今坂さんは、「自分のオモチャを近くに置いておけるのが何よりうれしい」と頬を緩める。安心と効率を手に入れ、アクティブなバイク&自転車ライフに拍車が掛かっているようだ。
©RECRUIT Powered by CarSensor